睡眠時無呼吸症候群治療のご案内

Information on sleep apnea syndrome

■睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠中に10秒以上、呼吸停止している、あるいは正常の半分以下の呼吸しかない低呼吸の状態を、睡眠時無呼吸といいます。この無呼吸・低呼吸の回数が、1時間あたり平均5回以上あるとき、「睡眠時無呼吸症候群」と呼びます。程度として5回から20回迄を軽症、20回から40回迄が中等症、40回以上を重症とします。
睡眠時無呼吸症候群という「病気」があることがわかってきたのは、この30年くらいです。米国でウィスコンシン州の公務員を調査した結果では、成人男性の24%、女性の9%に睡眠時呼吸障害がみられたそうです。
日中、だるい、眠いなどの障害をともなう無呼吸症候群は成人の5%といわれており、日本では200万人とも推計され、ずいぶんありふれた病気といえますが、診断されずに見過ごされている方がとても多いのが実態です。

 

■睡眠時無呼吸症候群症例と眠気症状評価表

Kさん(41歳、男性)は、だるさ・微熱、意欲がわかない、日中の眠気などに悩んでいました。コンピュータ関連の仕事をしており、この一年忙しくストレスもありました。
身長174cm、体重104kgと肥満があり、高血圧(168/120)、夜中に2~3回、目が覚め、ストレス性の抑うつ状態ではないかと、Kさん自身も精神科受診を希望していました。
よく話を聞いてみるといびきがひどく、「妻に、呼吸がときどき止まっているといわれる」とのこと。
睡眠検査をしたところ、1時間あたり10秒以上の無呼吸回数(無呼吸指数)が88回、重症の無呼吸症候群でした。そこで鼻マスク持続陽圧呼吸(後述)をしてみると自覚症状は劇的に改善し、血圧も正常になりました。
表は、治療前のKさんの日中の眠気症状(ESS評価)です。
24点満点で10点以下が正常で、Kさんは17点でした。みなさんはいかがですか。
日中の眠気症状評価表
あなたの最近の生活で、次の状況で、眠ってしまうかどうか等を下の数字でお答えください。
質問のような状況になったことがなくても、その状況になればどうなるかを想像してお答えください。
赤い数字Kさん
0=眠ってしまうことはない
1=時に眠ってしまう(軽度)
2=しばしば眠ってしまう(中等度)
3=ほとんど眠ってしまう(高度)
 
Johns MW:A new method for measuring daytime sleepiness;
The Epworth sleepiness scale.Sleep 14:540-545,1991より引用改変
 

■睡眠時無呼吸症候群のメカニズム

上気道がふさがって起きる

睡眠時無呼吸症候群の多くは、睡眠中に上気道(のどのあたり)がふさがっておきます(閉塞型睡眠時無呼吸症候群=図1)。狭い上気道で息をするために、ひどいいびきがともなうのです。
ひどいいびきの方が全て無呼吸症候群ではありませんが、発見の手がかりとなる大事な症状です。
無呼吸症候群はひどい肥満の方が多いように思いがちですが、日本人の場合必ずしもそうではありません。当院の調査でも、軽度の肥満の方が40%くらいともっとも多く、体重はふつうの方も4分の1弱を占めていました(図2)。
多いのは、肥満のため首の周囲が太くなっている方です。また下あごが小さい、顔面の前後径(奥行き)が短い、舌が肥大しているなど、顔や首の形にいくつかの特徴がみられます。顔と首の形と上気道の狭さとが関係しているわけです。
もともと上気道が狭いところに、睡眠中は舌や咽頭の筋肉がゆるむため、上気道がふさがるのです。
 

脳卒中や心臓病にも大きな影響

無呼吸のたびに睡眠も中断し、患者さん自身気がつかない目覚め(脳波上の覚醒)が何回となくおきて熟睡できないため、日中の眠気の原因となります。仕事の能率が落ちるなど日常生活をそこない、自動車運転事故の原因にもなります。
それだけでなく、無呼吸により酸素不足がおこり、脳や心臓などへ悪影響をおよぼします。脳卒中や心臓病・高血圧などをおこしやすく、無呼吸の程度がひどければ、生命にも影響することがわかってきました(図3)。また、糖尿病の合併も多いとされています。
 
 
 
 
 
 
 
私たちの経験でも、日中の高血圧が非常にコントロールしにくい患者さんで無呼吸症候群が診断され治療により劇的に血圧が改善した方がいます。当院で昨年1年間に無呼吸症候群と診断を受けた方65人を調査したところ、60%の方が、狭心症や高血圧、慢性の呼吸器疾患等、慢性疾患がありそれが診断のきっかけでした(図4)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

劇的に改善するCPAP療法

治療法を説明します。
無呼吸症候群が中等から重症のかたは、鼻マスク持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)が有効です。
睡眠中に鼻にマスクをつけて器械で一定の圧をかけ、上気道がふさがらないようにするのです。
健康な人は苦痛に感じてしますが、無呼吸症候群の方には快適な睡眠をもたらすので喜ばれます。
自宅で毎晩、基本的に長期間、行ないます。CPAP療法は81年に閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療に導入され、症状が劇的に改善することがわかりました。治療効果として、無呼吸・低呼吸・いびきがなくなり、睡眠の質が向上するので、日中の眠気もとれ、高血圧や狭心症などの合併症も改善します。副作用は、マスクによる皮膚のかぶれや口の乾燥などがあります。98年から条件を満たす方(AHI 40以上)に限り、健康保険の適応になりました。(保険適応の際は1~2ヶ月毎の受診が必要となります)

 

マウスピースや手術の方法も

歯科装具(マウスピース)をつくり、上下の歯の間に固定し、下あごを少し前に突き出すようにするのも有効で、軽症から中等症の無呼吸症候群の方にはすすめています。
そのほかに、耳鼻科的に手術をして、上気道を広げる方法(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)もあります。

 

生活習慣の改善も大切

生活習慣の改善も大切です。肥満の方は、食事・運動療法により、余分な脂肪をとりのぞき、体重をおとすことが大切です。また飲酒や睡眠薬は上気道の筋力を低下させ、閉塞を悪化させるので制限が必要です。一般的には、年齢を重ねるに従って、睡眠時無呼吸は悪化することが多く、高血圧や糖尿病と同じように治療を続けることが大切です。